藤藪  詩歌管弦 2023

作品ではありません。ノート、備忘録。

俵 万智 「サラダ記念日」

 

黙ののちの言葉を選びおる君のためらいを楽しんでおり

 

また電話しろよと言って受話器置く君に今すぐ電話をしたい

 

大きければいよいよ豊かなる気分東急ハンズの買物袋

 

あいみてののちょの心の夕まぐれ君だけがいる風景である

 

球場に作り出される真昼間を近景として我ら華やぐ

 

「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ

 

卵二つ真剣勝負で茹でているネーブルにおう日曜の朝

 

君と食む三百円のあなごずしそのおいしさを恋とこそ知れ

 

まちちゃん我を呼ぶとき青年のその一瞬のためらいが好き