藤藪  詩歌管弦 2023

作品ではありません。ノート、備忘録。

和泉式部集

男に忘られて侍りけるころ、貴船に参りて御手洗川に蛍の飛び侍りけるを見てよめる

ものおもへば沢の蛍わが身よりあくがれいづる魂かとぞ見る

  御かえし

奥山にたぎりて落つる滝つ瀬に魂ちるばかり物な思ひそ

 

男に忘れられたことを悩み、貴船明神に参詣。

「川の蛍はわが身から抜け出した魂ではないか」

貴船の神の返歌

「水の玉を砕く、魂を砕くほどの物思いはやめなさい」

 

あらざらん この世のはかの思ひ出にいまひとたびの逢ふこともがな

重い病の床から。死んだあの世での思い出に、もう一度お逢いしたい。

 

男がはじめて女に贈る恋歌 代作

おぼめくな誰ともなくて宵々に夢に見えけん我ぞその人

 

遠方へ行く女性を感動させる別れ歌 代作

惜しまるる涙に影はとまらなむ心も知らず秋は行くとも

別れの涙にあなたの面影はとどまってほしい

 

黒髪の乱れも知らずうち臥せばまづかきやりし人ぞ恋しき