藤藪  詩歌管弦 2023

作品ではありません。ノート、備忘録。

山頭火 放哉 自由律の俳句

 山頭火

 

しぐるるや しぐるる山へ 歩み入る

 

分け入っても 分け入っても 青い山

 

酔うて こほろぎと 寝ていたよ

 

焼き捨てて 日記の灰の これだけか

 

どうしようも ないわたしが 歩いている

 

ついてくる 犬よおまへも 宿なしか

 

まっすぐな道で さみしい

 

うしろすがたの しぐれてゆくか

 

生死の中 雪ふりしきる

 

鉄鉢の中へも霰

 

また見ることもない 山が遠ざかる

 

こころ疲れて 山が海が 美しすぎる

 

おちついて 死ねそうな 草萌ゆる

 

 放哉

 

咳をしても一人

 

入れものがない 両手で受ける

 

こんなよい月を 一人で見て寝る

 

一人の道が 暮れて来た

 

一日もの云はず 蝶の影さす

 

障子あけて置く 海も暮れきる

 

大空のました 帽子かぶらず